
びわ一筋54年
樹上でじっくり育てた完熟びわを届けます
「びわ栽培を始められたきっかけを教えてください」
山田さん(以下、略)
「18歳のときに、自分で山を切り開いて、びわの木を植えたのが始まりです。
もともとは農業の学校を出て、大阪の園芸店で修行していました。最初は花をやりたいと思っていたのですが、「この地域(南房総市富浦のお住まいの地区)では花は難しい」と言われて、びわに決めました。
びわ専業になってから、今年(2025年)でちょうど54年目になります。
「畑の場所や環境には、どんな特徴がありますか?」
「私の畑は山側にあります。海辺に比べると気温が2度ほど低いため、収穫時期がやや遅くなるのが特徴です。そのぶん、斜面の水はけの良さを活かして、暗渠(あんきょ)排水を入れるなど工夫しています。
びわは暑すぎても寒すぎても実が傷みます。
28℃を超えると高温障害、マイナス3℃を下回ると寒害を受けます。だから、この地域で適地を見つけるのは本当に大変でした。
以前、東京農大の学生たちと一緒に、寒害を避けるためのびわ栽培の適地を探すマッピング作業などもしていたんですよ。学生たちが用意したドローンを飛ばして上空から調査など行いました。」


「年間を通じての作業スケジュールを教えてください」
「受粉は自然まかせで、秋から冬にかけて花が咲きます。
年が明けた頃から摘果(花もぎ)を行い、3月初めには袋掛けをします。この袋掛けが虫よけと日焼け防止にとても大事なんです。最近は気候が読めず、タイミングの見極めが難しくなってきていますね。
ハウスびわの収穫は5月中旬から、露地ものは6月中旬ごろから始まります。びわの収穫期は梅雨と重なるため、実が雨に濡れないよう、注意が必要です。」
「栽培面で特に気をつけていることはありますか?」
「肥料の与え方にはとても気を使っています。収穫が終わったら、まず「お礼肥」をします。これは、次の年の花芽をきちんとつけるために必要な作業です。そして9月には「元肥」を与えます。最近はびわ専用の化学肥料を使っていますが、昔は魚粉や海藻、鯨の粉なんかも使っていました。
1本の木から平均で500〜600個、多いと2,000個ほど実がなりますが、木が大きくなると管理が大変になるので、うちではある程度の大きさにとどめています。」
「収穫や選果の際には、どんな工夫をされていますか?」

収穫は朝から夕方まで、2人から4人で行います。できるだけ木で熟したものを選び、青みがなく、色づきの良い実を手摘みします。収穫した実は、軸が当たらないよう、丁寧にランダムに重ねてカゴに入れます。
選果の際には、実を一日寝かせます。収穫時に傷ついた実は、時間が経つと茶色くなってしまうので、それを見極めてから箱詰めします。箱詰めは3人体制で行い、サイズごとに分け、最後の人がもう一度確認してから詰めていきます。
「出荷や販売の工夫についても教えてください」
「もともとは市場に出荷していましたが、一番実がとれるピークの時期に一番値が下がるという市場の仕組みにどうしても納得できませんでした。そこで、自分でチラシを作って、南房総から木更津の方までポスティングして直販を始めました。
あるとき、木更津の郵便局の方が富浦の郵便局長を紹介してくださって、それがきっかけで今のゆうパックでの発送につながりました。
今では、南房総市の給食センターにも納品しています。」
「びわ栽培の魅力とは、どんなところにあると思いますか??」

「難しいところですね(笑)。
気候に左右されやすい果物なので、年によっては思うようにいかないこともあります。でも、きちんと手をかけた分、きれいに育って、甘くて美味しい実をつけてくれる。収穫したびわを、お客様が「おいしかったよ」と言ってくれると、やっぱり嬉しいです。」
「今後の目標や夢があれば教えてください」
「びわの木も高齢化してきています。私も体力的にいつまでできるかわかりませんが、これまで築いてきた畑や技術を、誰かにしっかり引き継いでいけたらと思っています。
それと、もっと多くの方に南房総のびわを知ってもらいたいですね。旬が短い果物ですが、その分、出会えたら本当に贅沢。そんな特別感を、これからも大事にしていきたいです。」

インタビュー 野菜ソムリエプロ安西理栄

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